投球動作で肩を痛めることはかなり多く見られます。「野球肩」と言われますが、野球肘と同様に、一つの病名ではなくいくつかの病名の総称です。またいくつかの障害が重なって出る事もあります。
投球動作はワインドアップ期、加速期、フォロースルー期の3つの期に分けられます。どの動作で痛みが出るかで障害の場所も異なってきます。加速期では主に肩の前方の障害が多く、フォロースルー期では主に後方の障害が多く見られます。前方の障害で痛みの原因になるのは、棘上筋、肩甲下筋、上腕二頭筋、大胸筋、烏口肩峰靭帯などで、後方の障害では棘下筋、小円筋、上腕三頭筋、大円筋などです。専門的な話で分かりにくいと思いますが、これら一つずつが病名になり、組み合わさっても病名になるということを理解して頂きたいです。
その中で腱板と言われる筋肉を痛める事が最も多いです。「野球で肩をこわす」のはこの腱板が切れたり、繰り返しかかる負担で炎症を起こし腱板炎という状態になることがかなりの頻度で見られます。腱板炎になるとまず大事な事は投げない事です。もちろんシャドーピッチングもダメです。しかしそれ以外の動作は何を行っても構いません。
当院での治療は炎症をおさえるために低周波等の電気治療を行うだけではなく、腱板の筋力強化やストレッチやリラクゼーションなどの理学療法を行っています。これらの筋力強化やストレッチは治療のためだけでなく、障害の予防にもなりますので野球等の投球動作のあるスポーツをやっていらっしゃる方は、年齢を問わずに行った方がいいでしょう。
ピッチャーの肩への負担は他のプレーヤーの何倍もあります。速いボールを正確に投げるためには技術と体力が必要です。練習によって鍛え筋肉を強くする事は大事ですが、人の身体には当然限界があります。その限界も個人差があるので、他人の事は気にせずに自分の限界や回復能力を知り、その中で練習して少しずつ限界を広げて行くといいでしょう。「痛くても投げる」のは一番やってはいけない事です。 |